2024年7月30日

忍術〜兵糧丸編〜|にんぱくブログ|体験

NINJA

忍者の携帯食である兵糧丸(ひょろうがん)には、カロリー補給の他にもうひとつ重要な役目があります。それは漢方薬の薬理作用による気力回復です。
ひとくちに兵糧丸といっても、いくつか作り方が伝わっています。
ここでは名軍師・山本勘助『老談集(ろうだんしゅう)』のレシピを参考に見てみましょう。

主な材料は蓮肉(蓮の実の乾物)、桂心(シナモン)、人参(朝鮮人参)などの生薬、そして大量の氷砂糖と書かれています。

これら生薬には「滋養強壮」「疲労回復」「下痢止め」に加えて、「緊張緩和」「鎮静」といった精神面に効く成分が含まれています。氷砂糖には、大量に使用することによる防腐効果が期待でき、体に入れば脳を働かせる栄養となります。現在では、脳は糖をほぼ唯一のエネルギー源とするユニークな臓器として知られていますが、忍者は経験的にそれを知っていたのかもしれない。

そのほか、干し鮑や干し鮭などタンパク質を材料に使ったものや、そば粉やもち米粉などを使って腹持ちを良くした「飢渇丸」、梅干しを使って軽い喉の渇きを抑える「水渇丸」が伝わっています。おそらく忍者は、任務にかかる時間の長短や仕事の激しさを加味して、必要になる栄養配分を考え、その時々に合った携帯食を作ったのでしょう。

兵糧丸は、お腹を一杯ににするというよりは、任務中に使ったカロリーを補い、気力を充実させるための携帯食。登山家が山を登りながら栄養補給しているのが、現代の社会では近い状態です。

兵糧丸(ひょうろうがん)

兵糧丸と言っても、現代には様々な兵糧丸が伝わっています。ここでは、『老談集』をもとに久松眞氏が薬4分の1スケールで試作した分量のレシピをご紹介いたします。

材料・分量・薬効
・もち米 0.5g
 炭水化物の補給、体を動かすエネルギー源
・うるち米 0.5g
 炭水化物の補給、体を動かすエネルギー源
・蓮肉 9.5g
 蓮の実の乾物のことです。ビタミンB1が豊富、「滋養強壮」「疲労回復」「下痢止め」「緊張緩和」
・山薬 9.5g
 山芋(自然薯)のことです。粘性多糖やビタミンが豊富、「滋養強壮」「胃潰瘍」「食欲不振」
・桂心 9.5g
 シナモンの皮から取れる生薬のことです。「鎮静・鎮痛」「整腸効果」「血行促進」「発汗」「解熱」「風邪予防」
・ヨクイニン 9.5g
 はと麦の種子「抗炎症」「肌荒れ」「イボ取り」「利尿・むくみ」
・朝鮮人参 0.5g
 サポニンの薬理効果が高い、「滋養強壮」「疲労回復」「鎮痛」「整腸効果」
・氷砂糖 225g
 脳への直接的な栄養補給効果、体へのエネルギー供給

作り方
1 すべての材料を粉末にする。
2 氷砂糖以外の材料に適量の水を加え煎じる。
3 氷砂糖に適量の水を加え弱火で温めて溶かす。
4 2と3を合わせ、弱火で煮詰める。
5 丸めて乾燥して固める。

材料からわかるように、この兵糧丸は砂糖がメインです。実は江戸時代まで砂糖は超貴重な薬扱いでした。今の点滴に近いものでした。次に多い材料が漢方薬で処方される生薬です。それらの成分を分析すると6つの薬理作用「滋養強壮」「鎮痛」「救急医薬」「エネルギー補給」「疲労回復」「健康維持」があることが分かりました。体力と気力両方回復する携帯食と言えます。

水渇丸(すいかつがん)

軽い喉の渇きが気にならなくなると言われている水渇丸の作り方を、『万川集海』に基づいてご紹介いたします。

材料・分量・効能
・梅干の果肉 約37g
 クエン酸が含まれている、胃を整える
・氷砂糖 約7.5g
 この場合は、使用料が少ないので梅干の酸っぱさやしょっぱさを和らげる作用
・麦門冬 約3.77g
 ジャノヒゲの根が原料の生薬、咳止めや強壮の効果がある

作り方
1 梅干の果肉部分と種の部分を分ける
2 残りの材料を粉末にする
3 両者を混ぜて手でよくこねる
4 1cm程度に丸め、乾燥させる(天日干しにする)

梅干しの成分が唾液の分泌を促進し、麦門冬(ばくもんどう)の成分が喉の渇きや痛みを一時的に弱めます。「3粒食べれば、45日間水を飲まなくて大丈夫」という伝承がありますが、それはさすがに誇大広告でしょう。実際は、軽度の脱水症状からくる不快感を紛らわせて、その間に水場に戻るなどしたと考えられます。

ここまでは歴史的な兵糧丸について書いてきましたが、現代の兵糧丸と言えるような商品をコンビニで見つけたので、成分を比較したいと思います。

最後のひとつをそれぞれ並べて。危うく写真撮る前に完食しそうでした。

写真の通り、これからご紹介するのはその名も「忍者めし」
今回手に入れることができたのは、「忍者めし鋼 コーラ味」と「忍者めし鋼 グレープ味」「忍者めし ラムネ」の三種類です。

さっそく、忍者めしコーラから成分表を見ていきたいと思います。

原材料名
・果糖ぶどう糖液糖(国内製造)
・砂糖
・ゼラチン
・米粉
・ポリデキストロース
・濃縮果汁(デーツ、レモン)
・殺菌乳酸菌飲料
・水飴
・こんにゃく粉
・澱粉/酸味料
・香料
・着色料(カラメル)
・光沢剤
・(一部に乳成分・ゼラチンを含む)

作り方
わかりません

栄養成分表示
50gあたり
・エネルギー 159kcal
・タンパク質 5.9g
・脂質 0g
・炭水化物 36.9g
・食塩相当量 0.03g

原材料は多い順に並んでいます。
まずいちばん頭にある「果糖ぶどう糖液糖(国内製造)」とは?日本でつくられた果糖ぶどう糖液糖ということはわかりますが、えっと、ひとつの名前の中に三つも糖が入ってるのですが、いったいどういうことなのでしょうか?めっちゃ甘い?調べてみました。

「ぶどう糖」と「果糖」を主成分とする液状糖を「異性化糖」といいます。異性化糖は、以下の3つに分類されます。

 ・ぶどう糖果糖液糖…果糖含有率が50%未満のもの

 ・果糖ぶどう糖液糖…果糖含有率が50%以上90%未満のもの

 ・高果糖液糖…果糖含有率が90%以上のもの

https://pantry-lucky.net/contents/blog/katoubudoutou

ということらしいです。へー。ほとんど砂糖と同じような感じで使われるらしい。とうもろこしやさつまいもの澱粉を分解してつくられるそうです。

次にわからないのが、ポリデキストロース。ポ、ポり?調べてみました。

☆ポリデキストロースは、グルコース(ブドウ糖)、ソルビトール、クエン酸を原料とした安全な食物繊維です。
https://www.otsuka.co.jp/health-and-illness/fiber/about/type/polydextrose/

ポリデキストロースは、グルコース(ブドウ糖)、ソルビトール、クエン酸を原料とした安全な食物繊維です。

https://www.otsuka.co.jp/health-and-illness/fiber/about/type/polydextrose/

つまり合成食物繊維ってやつでしょうか。人工食物繊維? 人造食物繊維?

次に濃縮果汁のデーツ。これは私は乾燥フルーツマニアなので知っておりましたが、まだ日本ではメジャーではないかもしれません。デーツは中東なんかが主な産地の美味しいフルーツです。乾燥デーツは輸入物の読めない字のパッケージのやつがおすすめです。

そして殺菌乳酸菌飲料。乳酸菌飲料を、殺菌しちゃった!?それって・・・まあ、とりあえずこれが何なのか調べましょう。

また、死んだ菌が腸内の免疫細胞を刺激して、低下している防御力を増強させる『免疫賦活』という効果があります。「インフルエンザの感染予防に効果的」とテレビなどで紹介されたR-1乳酸菌などは、つくりだす多糖体が免疫賦活効果を発揮するため、生き死にはそれほど関係ないそうです。

https://withnews.jp/article/f0160326003qq000000000000000W00o10101qq000013137A

ということでした。
あと気になるのは光沢剤・・・

☆シェラック(白シェラック、精製シェラック)
ラックカイガラムシの分泌する樹脂状物質を精製して得られたもので、成分は樹脂酸エステルです。アルカリ性水溶液やエタノールで抽出、漂白又は精製したものが、白シェラックや精製シェラックです。エタノール溶液として菓子、糖衣食品、果実等の表面に塗布、乾燥させると、表面に光沢性、防湿性のある皮膜を形成します。光沢剤の他に、チューインガムベースとしても使用されます。

使用対象食品:キャンディー、チョコレート、果実など

☆パラフィンワックス
原油を減圧蒸留して得られる潤滑油分画を処理して得られたもので、炭素数20~40の炭化水素の混合物です。加熱すると粘性の低い液体になり、菓子、糖衣食品、果実等のコーティングに用いられます。

使用対象食品:キャンディー、チョコレート、果実など

☆ミツロウ
ミツバチの巣より加熱圧縮後、ろ過したものより得られたもので、主成分はパルミチン酸ミリシルです。粘稠性、伸展性が強く、熱エタノールや油脂に溶かし、菓子、糖衣食品、果実等のコーティングに用いると艶のある被膜を形成します。

https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/shokuten/kotakuzai.html

↑から信じたいものをお選びください。

思ったよりも長くなってしまったので、「忍者めし」のご紹介は「忍者めし鋼 コーラ味」までとしたいと思います。

「忍者めし鋼 コーラ味」が現代の兵糧丸または水渇丸と言えるかどうか、検証していきたいと思います。

まず、兵糧丸において一番大切なのは糖分の摂取です。これは「忍者めし鋼 コーラ味」もクリアしていると言えるでしょう。
気力の回復はどうでしょうか?「忍者めし鋼 コーラ味」はその風味や噛みごたえの点から、食べると美味しくてなんか良いもの食べた気分になります。何より美味しい。これは気力の回復にも期待できそうです。

結論

「忍者めし鋼 コーラ味」は、生薬の成分こそないものの、デスクワーク程度の仕事においては十分に兵糧丸としての役割を果たしていると言えるでしょう。水渇丸にはまったくなりません。むしろ水かお茶が飲みたくなります。

終わりに

このブログを運営しているにんぱくには、忍者が実際に使っていた忍具が展示されています。群馬県の北西にある東吾妻町に、にんぱくはあります。吾妻地域は真田氏が支配していたころ、忍びの者として真田家に仕えていた忍者がいました。岩櫃城と言えば歴史好きの方はピンと来るかもしれません。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。これからもにんぱくをよろしくお願いいたします!