NINJA
隠形術(おんぎょうじゅつ)とは、忍術の一種であり、さまざまな手法を使って相手の視界から姿を消す技術の総称です。一般的には「隠れる」と聞くと、例えば岩陰に身を隠して見つからないようにするイメージがありますが、隠形術はその表面的な意味だけでなく、より深い技術を含んでいます。その技術の一つとして、周囲の環境や風景に巧みに溶け込み、相手に気づかれることなく存在を隠すというものがあります。
たとえば、うずら隠れという術があります。これはまるで小鳥のうずらのように、手・足・頭をひっこめて丸くうつ伏せになる隠れ方で、身を潜めるものがない時に、石などに寄り添う形で行います。この時に、できるだけ静かに呼吸をし、道端の石ころになる気持ちになって、生き物としての気配を消します。
隠形術は、単なる身を隠す技術にとどまらず、心理的な戦略を含んでいます。例えば、追跡者から逃れる際に急に隠形術を駆使して道を曲がることで、相手にとっては突如として姿が消えたように見え、居場所を確認できなくさせることができます。特に夜間や暗がりでは、周囲の闇に溶け込んで見つからないようにする効果が高まります。このように、隠形術は単なる身体の隠し方を超えて、戦術的な意味を持つ忍術の一つとして重要な役割を果たしています。
以上のように、隠形術は単純な隠れる技術を超えて、環境との一体化や心理的な錯覚を利用することで、相手の視覚的・心理的な盲点を突く忍術と言えます。
狸隠れ
木に登って隠れます。上方向への注意は疎かになりやすいので、その虚をつきます。隠れている側からは敵の姿を確認しやすいために、偵察任務でも活用したと考えられます。春や夏など葉が生い茂っている季節であれば、なお隠れやすく都合が良いです。ちなみに狸は木登りが下手で、あまり木に登りません。「まさか木の上に狸はいるまい」という人の意識を逆手にとる重要性を思わせる術名です。
観音隠れ
敵が近づいてきたら、壁や木などの物陰に身を寄せて顔を袖で隠し、目は観音のように半開きのまま動かない。顔の白さと呼吸をできるだけ目立たなくしつつ、相手を観察する術です。
ColBase: 国立博物館所蔵品統合検索システム (Integrated Collections Database of the National Museums, Japan), CC 表示 4.0, リンクによる
狐隠れ
蓮などの木の葉を頭にかぶり、頭だけ出して水中に隠れる術です。遠くからは水面に浮かぶ木の葉のように見えるので、見つかりづらいのです。まさか水中に人がいるはずがないだろうという盲点をついています。衣服は水を吸って重くなるために、服を着て泳ぐには技術と体力が陽朝になります。脱いだ方がいいと考えることもできますが、水にいるヘビなどの害獣から身を守ってくれたりもします。
楊枝隠れ
爪楊枝を飛ばし、相手が気を取られている隙に隠れます。実践的な意味合いよりも、教訓的な術です。忍者は爪楊枝1本さえあれば、その場における創意工夫によって隙を作り出し隠れることができるということを伝えています。
動物をまねて隠れる
忍術には、陽術と陰術の二つの大きな分類があります。陽術は、堂々として姿を現して行動する術であり、例えば潜入先の家に客として偽装し、下見をするなどがその例です。一方、陰術は、闇に紛れて静かに情報を収集するなど、姿を隠して行動する術です。
また、忍術には動物の動きを模倣した「四足の習い」と呼ばれる術があります。この術は主に隠術に関連しており、動物が逃げ隠れするような行動を参考にしたり、動物の振りをして敵を欺く方法を忍者たちは試行錯誤しました。
特に犬は警戒心が強く、潜入作戦の際には天敵となり得ます。そこで忍者たちは、犬のものまねをすることで、潜入中に物音がしても「あれ、犬か?」と家主を油断させることがありました。犬の警戒のうなり声をまねたり、ブルブルという身震いの音をまねました。身震いをまねるためには、着物のつまをよく揉んで振ることでブルブルという音が出るのです。
しかし、動物に擬態するためには、その動きや仕草を細心の注意を払って観察することが肝要です。こうした訓練を積むことで、犬や猫、鳥などの動物だけでなく、周囲のさまざまな物をも模倣し、どんな状況下でも敵を欺くことができるようになるのです。
動物を真似る術の例
・犬の毛皮をかぶる
・狐狼の習い
狐や狼のように人の裏をかく行動を考える
・牛馬のつたえの事
牛馬が人に慣れるように敵方に近づきスパイ活動
・水鳥の教え
水面上は静か、水面かでは足を動かす水鳥のように忙しさを見せない
・四つ足の習い
犬や子猫の行動を知って、まねたり、追い払ったりする。
終わりに
このブログを運営しているにんぱくには、忍者が実際に使っていた忍具が展示されています。群馬県の北西にある東吾妻町に、にんぱくはあります。吾妻地域は真田氏が支配していたころ、忍びの者として真田家に仕えていた忍者がいました。岩櫃城と言えば歴史好きの方はピンと来るかもしれません。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。これからもにんぱくをよろしくお願いいたします!